雛人形の歴史 雛人形2300年時空の旅 ドールコーディネーター平安春峰
●人形に関してよく受ける質問
 

一、お内裏様とお雛様の位置

「お内裏様とお雛様」つまり男雛・女雛の夫婦雛の位置ですが、京都では、お内裏様を向って右側に、お雛様を向って左側に飾っているお店が多くあります。これは、明治政府が、西洋文明を取り入れるまでの京都御所での天皇の位置に習ったものです。
京都御所の紫宸殿は、南向きに建てられています。太陽は、東から昇ります。この太陽の光を最初に受ける側、すなわち、向かって右側を日本では上座としてきたのです。すなわち京都では、日本の昔の上座に習った飾り方をしているということです。その他の地域では、お内裏様を向って左側に、お雛様を向って右側に飾っているお店がほとんどです。それは、大正天皇の即位の礼の時に西洋式に天皇陛下が左、皇后陛下が右に立たれた時点から関東圏を中心に全国に広まった飾り位置です。
また、今日では、生活の中でも西洋式の男女の位置が一般化しているので日本人形協会では、協会加盟店統一の標準飾り方としました。雛祭りは、その行事が受け継がれてきた地方や家ごとの歴史や伝統をうつして、さまざまなかたちで伝えられてきました。
そうしたことから考えますとお内裏様の位置が違ってもどちらも間違いではありません。


二、お雛様を飾る期間

 雛人形の飾り付けと片付けは、女の子がお母さんやおばあさんと一緒に行うのが昔からの習わしです。 内裏雛、三人官女、五人囃子らの人形をはじめ、ぼんぼりや桜橘などの細やかな道具をひとつひとつ丁寧に扱うことで、物を大切にする心や整理整頓の教えを伝えてきたわけです。

 「雛人形をいつまでも飾っていると結婚が遅れる」といわれますが、これも「きちんと片付けができない女の子はいいお嫁さんになれない」と言う教えが部分的に強調されたものです。

 ですから「三月中に片付けなくては…」と急ぐ必要はありません。 三月は旧暦で考えるとまだ桃の時期には早く、また、節目を祝う意味からいっても、春を告げる桜が花開く四月初旬まで飾っておいても遅くはないのです。 その方が華やぎがあり、人形たちも喜んでくれるのではないでしょうか。 節句の習わしや幼い頃の思い出を語りながら、親子で人形を飾り付け、片付ける。 そんな家族の微笑ましい光景は、きっと幼い子供の胸に刻まれ、またその子供へと伝えられていくことでしょう。 家族の大切なコミュニケーションの場として、桃の節句を毎年お祝いしたいものです。


三、ひな人形はどちら側の親が贈るのでしょうか

初節句を迎えられる子供さんに、雛人形を買い求めるのは、男性側、女性側、と言った決まりはありません。昔は、ご両親と同居されている方がほとんどでした。嫁を貰われるにしろ、婿を貰われるにしろ、結婚時には貰われる方が結納金を持参し、大切な伴侶を貰い受けます。その後、嫁がせた側は、舅、姑の居られる家へ、口実もなく訪問しにくくなります。しかしながら、嫁がせた側は、娘にしろ、息子にしろ、どの様に暮らしているか、親心として心配でなりません。そこで、祝事の度に、祝品(雛人形など)を持参する口実で、様子伺いをしたわけです。どちらかというと、婿を貰うより、嫁を貰うという習慣が多い日本では、そうした日本の家族体系が、自然発生的に、嫁側の実家が送るという慣習になったと考えられます。
今日では、核家族化が進み、台所を預かる女性側の両親の方が、若夫婦の住まいへ行きやすくなっているのではないでしょうか。そうしたことから考えますと、本来の、女性側が様子伺いの口実に雛人形を送る、と言った意味合いは、現代社会では可笑しな話しになります。
しかしながら、文化的習慣は、ただ時代背景とは食い違った継承をしてしまうことがあります。


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